留学で考えたSDGs

留学で考えたSDGs

読んだらあしあとをつけましょう!

CARE International Japan Youth Project メンバーの木村将成です。

私は昨年(2019年)9月から約半年間、アメリカのミシガン州に留学していました!今回は、その半年間で私が体感した日本との違いを教育と貧困の2つの分野で、SDGs に絡めて紹介しようと思います。

日本に住んでいる限り東日本大震災や少子高齢化について無関心な人は少なくはないだろうし、個人個人の「関心」の対象も住んでいる場所や周りの環境によって知らないうちに制限されやすい、と私はアメリカに行って強く感じました。関心を少しでも広げるためにも読んでいただけると嬉しいです!

1.教育の違い 

~Effective Learningとは?〜

私は留学中、現地の公立高校に通っていました。かなり裕福な地域ではありますが、ごく普通の学校です。しかしそこでは想像していた何倍もの日本の教育との違いがありました。SDGsの4番「質の高い教育をみんなに」のターゲットの一つに、「適切かつ効果的な学習方法をもたらす」ということが書かれています。それでは、効果的な学習とは何なのでしょうか?アメリカとの違いを比較しながら考えていきたいと思います。

アクティブラーニング

近年日本でもよく取り上げられるようになったアクティブラーニング。生徒参加型授業とも訳され、今年度から導入された高校の新教育指導要領の要となっているキーワードです。これがアメリカでは当たり前に行われていました。

 例えば歴史の授業では先生の講義はほとんどありませんでした。最初の課題は多くのアメリカの先住民の中からグループで一つを割り当てられ、それについて授業時間を使いGoogle slideにまとめて発表する、というようなものです。このような課題が物理や政治などどの教科でも出されました。

プレゼンテーションの例、他の留学生4人とのグループワークでした。

これは一概に”効果的”と言えるかは分かりませんが、少なくとも講義型の授業より自分の頭で考えさせられることは多いと感じました。どのように他人とコミュニケーションをとるか、どのように情報を集めるか、どうしたら効果的に発表できるかは自分たちに任されることが多く、答えはありません。このような能力はこの先重要になってくると思います。一方、アクティブラーニングは時間がかかりたくさんのコンテンツをカバーすることは厳しいという欠点もあり、難しいところです。

ICT環境

同じプログラムで留学した友達が口を揃えていうことの一つが「授業でパソコンを使うことが多かった」です。私が通った学校では各教室に貸し出し用のノートパソコンが人数分あり、先生の指示により学校のID(Google アカウントとなっている)でログインをし、Google Docs や Google Slideを共有して共同作業をするということが毎日の授業で行われていました。コロナでの休校後もすぐにオンラインに切り替わり、先生がCanvasというオンライン学習用のページを通して毎日課題や授業動画を配信していました。

今回のパンデミックにより日本で大きな問題となった休校による教育格差もICT教育の整備が進んでいれば少なかったかもしれません。また、ICT教育の発展は学校が遠くて通えない子供達や紛争などで通学に危険が伴う子供達も救う可能性があると感じました。

平等な”機会”を与える教育

もう一つのアメリカ教育の大きな特徴に、能力に応じて自分でクラスを選べることがあげられます。私が取っていた政治のクラスには一つ下の学年から上の学年まで3学年にわたる生徒が同じ授業を受けていました。また、高校のうちに大学レベルの”AP”というクラスをとり学期の最後に公式のテストを受けることで、高校にいながら大学の単位を得られるという制度もあります。これは大学への進学の際に有利になりますし、何より大学での高い授業料を払わなくて良いというのが大きなメリットだとホストファミリーは言っていました。

私はAP Biology をとっていました

日本の高校では少人数制度などはありますが基本的には同学年全員が、クラスごとに同じ授業を受けると思います。これは集団行動を身につけたり行事を行なったりするのには適していて、そして全員が”平等”な授業を受けています。一方アメリカの高校ではクラスや学年のまとまりという概念は少ない一方(文化祭や体育祭のような行事はありません)、全員が自分にあったクラスを選択する“平等な機会”を与えられています。これも難しいのですがどちらが”効果的”なのでしょうか?

2.貧困・経済格差

〜もし生まれた場所によって環境が決まってしまったら〜

ホストファミリーに連れられて車の街、デトロイトに行ったときのことです。「ここがデトロイトのdarkな部分だよ」と言われて車窓からみえたのがこの光景でした。しかもこれだけでなく、このような建物が道の両橋にずらりと並んでいます。なぜなのでしょうか?

壁がはげ、窓が割れ、落書きをされているのがわかると思います…

地域によって区画された格差

かつて鉄鋼石や石炭の産地が近いこともあり大きく発展し、FordやGMなど大きな自動車会社が本社を置くデトロイト。しかし工場の海外移転や日本をはじめとする外国との貿易競争をするうちに衰退していき、ラストベルト(さびついた工業地帯)と呼ばれるようにもなっています。町としては2013年の破産申請以降再生しているようですが、まだまだ再開発が進んでいない部分が多くあります。

その過程で生まれた大きな問題に周辺地域との経済格差があります。アメリカ政府は戦後人を都市部に密集させず郊外の住宅地に移住させるという郊外化を進めてきました。しかしそもそも移住できるのはある経済力のある中流階級の白人や裕福な黒人たちがメインなので、デトロイトには過去に外部から職を求めてやってきた貧困層の黒人たちが取り残されてしまいました。その証拠にミシガン州全体では黒人の割合が14.2%なのに対し、デトロイト市では80%を超えています。私が通っていた学校は郊外にあり、ほとんど白人の生徒で貧困という話をあまり聞かなかったので、貧困が地域に根付いてしまっていると感じました。

学校にも格差が生まれる

この地域格差は教育にも大きな影響を与えています。なぜかというと、アメリカの学校は州や国からの資金からだけでは足りず、その地域(School Districtという)ごとの固定資産税で学校の財源を賄っているからです。先ほどの事例でいうと、いい家が多い郊外は固定資産税も高く、学校に使える財源が自然と多くなります。一方貧困層が住む地区では固定資産税が安く、その結果教育にかけられるお金も少なくなってしまうのです。

地域によっても違いがあるのですが、ほとんどの地域で固定資産税の多くが学校に使われています。

一般的に、良い教育を受けられなければ良い仕事に就くことは難しく、この状態が続くと制度的に貧困の連鎖を生むことになってしまいます。最近大きな問題になった #Black Lives Matterムーブメントの根底にある”Systemic Racism”(制度的差別)の原因も、この地域による経済格差や教育格差に大きな要因があるようです。

教会が果たす役割

特に私が暮らしていた地域では、そのような貧困層、貧困地区を助けるためには教会の役割が大きいと感じました。

私のホストが毎週通っていた大衆向けのコミュニティ教会です。私も毎回同行させてもらいました。

キリスト教は、(私の経験では)アメリカの生活のなかに当たり前のように溶け込んでいました。クリスマスもただプレゼントをもらうだけでなくキリスト教の行事という認識が一般的でしたし、友達も普通に”Jesus Christ!”(マジかよみたいな意味)のようなスラングを使ったりと、生活に浸透していました。

 その教会がやっている大きな活動の一つに、慈善活動があります。キリスト教は信者を増やすことが目的なのだと思いますが、その過程でアメリカ国内を含む世界中の貧困で苦しむ人たちを助けていました。ご飯を無料で提供してもらえたり、アフリカなどに学校を建てたり、教会によって差はあると思いますがなんらかの慈善活動を行っているようです。

また話は変わりますが、アメリカにはスーパーなどで売れ残った食品を一か所にまとめ、選別し、学校や協会などの団体に届ける”Food Bank”というサービスもあり、ボランティアさせていただきました。日本は国の保障が手厚い一方、アメリカは「小さな政府」なのでこのように民間で協力するという精神があるのかなと思いました。

ジェンダー問題のことも書きたかったのですが長くなってしまったのでまた次の機会にとっておこうと思います。

最後に

私は約半年間の留学経験を通して日本にいるだけでは経験できなかったようなたくさんの問題を知り、大きく視野を広げることができました。世の中にはたくさんの問題がありますが、私はそれらを語る上で

実体験、”Firsthand Experience”

はとても重要だと思います。その体験を増やすためにも、留学とまではいかなくてもアンテナを貼り、積極的に様々な体験をしてみることが単なる”興味”から”関心”へ変わる大きな一歩だと私は考えます。

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