「トトロ」から考える森林問題

「トトロ」から考える森林問題

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いきなりですがみなさん、「となりのトトロ」を見たことがありますか? スタジオジブリ、宮崎駿監督による言わずと知れた名作です。みなさんがトトロを見たことがあると仮定して、作中でメイがトトロに初めて会った場所はどこでしょうか?森の中です。「となりのトトロ」の時代設定は昭和30年代。しかし2020年となった現在、トトロのふるさとでもある森林や里山が荒廃してきているというのです...

 前置きが長くなりましたが、今回私は森林や里山について書こうと思います。

知っている人も多いかと思いますが、日本は世界有数の森林大国で国土のおよそ3分の2は森林に覆われていています。しかし、国内で使われている木材のおよそ7割は輸入材という現状があります。これは変だな、と思わないでしょうか? 

 木材として家や家具、紙などの原料となることに加えて森林には多くの大切な役割があります。今回の記事では「森林は〇〇」という形で森林の3つの役割について説明した後、最後に私たちにもできることについて少し触れたいと思います。


①森林はトトロのふるさと

〜森林を中心に作られる豊かな生態系の話〜

 地球温暖化の進行や都市開発などにより、人間は生物種の絶滅速度をここ数百年で劇的に加速させたと言われ、生物多様性の保護が近年大きなテーマの一つとなっています。

 1993年に生物多様性条約が発行されて以来、日本も国際会議を開いたり様々な政策を実施してきました。陸上の環境を考える上においてその中心となってきたのが森林です。森林には陸上の動植物のおよそ8割の生物が生息していると言われています。

(九州森林管理局)

 人を含むすべての生物は他の生物との関わりを通して生きているので、そのバランスがどこかで崩れてしまうと深刻な影響が発生する恐れがあります。森林は栄養豊富な水も供給するので農業や漁業にも関わってきます。また多種多様な生物は春の桜、夏のセミなど文化的・精神的にも私たちの中で重要な役割を果たしていることもあると思います。


②森林は地球温暖化抑制装置

〜森林による炭素固定の話〜

 最近の夏、暑いですね。ニュースなどで「史上最高気温」と聞くのも珍しくなくなってきました。大規模豪雨の発生も伴って、個人的には地球温暖化への意識が個人レベルでも高まってきている気がします。

 その地球温暖化の対策にも森林は貢献しています。光合成により二酸化炭素を吸収し、その中の炭素を蓄えているのです。

 森林は二酸化炭素を吸収し、地上部および地中に貯蔵して地球温暖化防止の役割を果たします。その吸収量は樹種や林齢により異なりますが、例えば50年生スギの人工林面積1ヘクタール当たりの炭素貯蔵量は170トン、1本当たりでは約190kgに達すると試算されています。これを50年で割れば1年間平均で1本当たり約3.8kgの炭素(約14kgの二酸化炭素)を吸収したことになります。

(林野庁 関東森林管理局HPより)

 二酸化炭素〇〇kgと言われてもイメージしづらいのではないでしょうか。一つ例を挙げるとすると、エアコンの設定温度を27℃から28℃にしたとき一年間で削減できるCO2は約11.8kg(環境省)これが木一本分の二酸化炭素削減量と近いようです。

 しかし、この森林の二酸化炭素吸収には一つの落とし穴があります。それは成長期の森林でないと吸収量がトータルでマイナスにならないということです。森林にはたくさんの生き物が住んでいて、それぞれが呼吸をしています。なので森林の生態系全体で見た時に吸収量の方が多くなるのは、成長期で光合成をたくさんする森林だけなのです。

 日本には昔から人が手を入れ、管理してきた人工林が森林全体の4割あります。その人工林は、戦後大規模に植林をしたため現在収穫期を迎えています。それらの森林を適切に利用し、新たに植林をするという循環が二酸化炭素の吸収につながります。だから現在は木を植え、育て、収穫する、という森林の適切な管理が重要となっています。


③森林は古来からのエネルギー供給地 

〜柴・薪からバイオマス発電の話〜

 桃太郎の冒頭「おじいさんは山へしばかりに…」ここで言う「しばかり」とは何でしょうか? 山に芝生があることは考えづらいので、芝刈り機で庭やゴルフ場の整備を…という「芝刈り」ではありません。おじいさんがやっていたのは「柴刈り」で、焚き木になる小枝を切り取る山の手入れです。おじいさんは炊事などで必要な焚き木を、生活のために近くの里山にでも取りに行っていたのでしょう。また、それらの柴は売ることができ、それがおじいさんの仕事だったとも考えられます。

 この話は知っている人もいたかもしれませんが、ここで言いたかったことは、昔は森林、特に里山が人々にエネルギー源を供給するインフラだったということです。

 日本では江戸時代まではこのシステムが続いていました。しかし18世紀半ばに起こったイギリスの産業革命後、石炭が蒸気機関車や蒸気船の燃料として使われるようになり、明治政府は国を挙げて石炭産業を推進したのです。この過程で「インフラとしての山」は失われ、山の手入れの役割を担っていた「柴刈り」をする人もだんだん減っていきました。これが森林の荒廃につながったことは言うまでもありません。価値がなくなった多くの森林・里山は都市開発のために切り倒されたり、手入れをしないまま放置されています。

 しかし近年、薪や焚き木がバイオマス発電の燃料として改めて注目されています。バイオマス発電とは、生物由来の資源であるバイオマス(化石燃料は除く)を燃料とする発電方法のことです。とうもろこしやサトウキビなどから作るバイオエタノールもバイオマスの一種です。木材の場合木くずなどは「木質ペレット」、間伐材などは「木質チップ」に加工され、燃料として使われています。これらは薪よりも燃焼効率を改良したものです。

 バイオマスを燃やす時に二酸化炭素は放出されますが、その二酸化炭素は木が成長過程で大気から吸収したものなので長期的に見れば炭素の収支はゼロである、と言うカーボンニュートラルの考え方に基づいてバイオマスは再生可能エネルギーとみなされています。化石燃料も生物由来ですが、燃焼させることで何百万年も前に植物や動物が固定した炭素を現在の大気に放出していると言う点で持続可能ではないと言えます。

 バイオマス発電のメリットは、燃料調達のために山の手入れをすることで森林の役割を最大限発揮できること、またその過程で山村地域に雇用を生み出せること、国産の燃料のため、化石燃料を大量輸入している日本のエネルギー自給率が上がることなどたくさんあります。しかしコストが高かったり発電効率が悪かったりすることが課題です。

 バイオマス発電が広まることによって森林が再びエネルギー供給地として注目され、手入れや管理がきちんとされるようになれば、環境的にも、経済的にも、社会的にもメリットがあるのではないかと思います。

まとめ

 私たちにできる簡単なことの一つは国産材を使った製品を買うことです。2005年から林野庁が「木づかい運動」というものを推進していて、このようなロゴマークを発行しています。インターネットにも例が載っていて、見てみると建築から玩具までたくさんの商品があります。

 もう一つはこの問題の現状、大切さを「知る」こと、そして他の人に「シェアする」ことです。今回記事にしたことは森林の大切さがメインで現状には詳しく触れていないので、この記事を見て興味を持ったらさらに調べてみていただけると嬉しいです。

 CARE Youthでは「無関心のグローバル化」を食い止めるために様々な問題に関心を持ってもらうことを目的として活動をしています。森林の問題も地球温暖化やエネルギー問題、海の環境の問題などにもつながっているので、なるべく多くのテーマにつなげるようにしました。

 持続可能な循環型社会を作る第一歩として、また将来の子供たちが「となりのトトロ」を見たときに近くで「トトロ探し」ができるようにまずは森林の保全に関心を持ってみませんか?


参考文献・サイト

「環境問題とは何か」 富山和子 (2001)

「里山はトトロのふるさと」 廣井敏男 (2004)

https://www.rinya.maff.go.jp/kanto/index.html

https://tap-biz.jp/lifestyle/word-meaning/1050550

http://www.jcoal.or.jp/worldheritage/03/05/

https://www.sbenergy.jp/study/illust/biomass/

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CARE International Japan Youth  project
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